可処分所得とは?

個人再生の手続きには小規模個人再生給与所得者等再生の二つの方法があります。違いをざっくりいうと、給与所得者等再生はサラリーマン向き、小規模個人再生は会社員以外の個人事業主などに向いているということになります。

 

詳しくはこちらの記事を読んでみてくださいね。
小規模個人再生と給与所得者等再生の違い

 

 

どちらの手続きも借金を大幅に減額することが可能ですが、最低弁済額(返済しなければいけない最低限の金額)を計算する時に、給与所得者等再生では可処分所得というものが関係してきます。

 

 

可処分所得とは、収入から所得税・住民税・社会保険料・生活費などを引いた残りの額のことで、計算上は借金返済のために使うことができる金額ということになるようです。

 

 

ここではこの可処分所得について、計算方法などを詳しくみていきたいと思います。

ベースとなるのは「年収」

可処分所得を計算する時には過去2年分の「年収」がベースになります。

 

 

給与所得者等再生を利用するためには「安定した定期的な収入があり、その収入の変動の幅が小さいと見込まれること」という条件が必要なのですが、今は安定しているけれど過去(1、2年前)に変動があったという場合もありますよね。

 

 

そういう場合には必ずしも過去2年分の年収がベースになるとは限りません。次のようなケースが考えられるかと思います。

 

1.年収にあまり変動がない場合

 

会社員で年収にそんなに変動がない場合は過去2年間の年収の平均をベースにします。このケースが一番一般的で、ほとんどの方はこれに該当するのではないでしょうか。

 

 

2.年収が大幅に減った場合

 

年収が大幅に減った場合は減少した年収をベースにします。

 

個人再生の申立をする前の年にリストラで転職をしていたり、会社の業績不振などで大幅に給料が下がってしまったという場合もありますよね。そんなケースでは過去2年間の年収をベースにすると支払いができず、再生計画が現実性のないものになってしまうからです。

 

 

3.年収が急激に増加した場合

 

2番とは逆に、過去2年間の年収をみたときに2年前に比べて去年の年収が大幅に増加している場合はその増加した年収をベースにします

 

 

4.給与所得者になってから日が浅い場合

 

自営業者だった人が売上が上がらず勤め人になったけど、まだ2年はたっていないといった場合ですね。

 

 

例えば、サラリーマンになってから1年半だとすると、その1年半分の収入を1.5で割って1年分の収入に換算します。そのようにして計算した収入を年収としてベースにします。

「生活費」は政令で決められている

以上のようにして算出した「年収」をベースに、年収から所得税・住民税・社会保険料・生活費などを引いた残りが可処分所得になります。

 

 

所得税・住民税・社会保険料は実際に支払った金額ということになるのですが、「生活費」は実際に生活のためにかかった金額というわけではありません。可処分所得を算出するための生活費とは、住んでいる地域や家族構成などによって政令で定められているのです。

 

(参考:民事再生法第二百四十一条第三項の額を定める政令

 

 

政令では居住地域によって6区に分類されています。市区町村ごとに細かく分類されているのですが、その一部を記載しますね。

 

第一区
東京都のうち特別区の地域(東京23区)、八王子市、立川市など
神奈川県 横浜市、川崎市など
愛知県 名古屋市
京都府 京都市
兵庫県 神戸市、尼崎市など
大阪府 大阪市、堺市、豊中市など
その他

 

第二区
北海道 札幌市、江別市
宮城県 仙台市
千葉県 千葉市、市川市など
広島県 広島市、呉市など
福岡県 北九州市、福岡市
その他

 

第三区
北海道 函館市、小樽市など
岩手県 盛岡市
群馬県 前橋市、高崎市など
新潟県 新潟市
和歌山県 和歌山市
徳島県 徳島市
沖縄県 那覇市
その他

 

第四区
北海道 夕張市、岩見沢市など
長野県 上田市、岡谷市など
兵庫県 加古川市、高砂市など
山口県 宇部市、徳山市など
長崎県 佐世保市など
その他

 

第五区
北海道 北見市、網走市など
青森県 弘前市、八戸市など
埼玉県 行田市、秩父市など
山梨県 富士吉田市、塩山市など
三重県 伊勢市、上野市など
広島県 竹原市、因島市など

 

第六区
第一区から第五区まで以外の市町村

 

 

以上のように、第一区は大都市、二区は一区より人口も市の規模も小さめの都市、というように六区にいくに従ってだんだんと人口の少ない小さな市町村になっています。

 

 

そして政令では、それぞれの地区の特性や債務者の年齢、家族構成などに応じて次の5つの経費を定めています。

 

  1. 個人別生活費
  2. 世帯別生活費
  3. 冬季特別生活費
  4. 住居費
  5. 勤労必要経費

 

 

1.個人別生活費

 

人一人が生活するのに必要と思われる費用のことです。第一区から第六区の区分ごとに年齢別に定められています。

 

例えば、第一区の2歳だと31万円、同じく第一区の20歳以上40歳未満は499,000円、第六区の2歳は24万円、20歳以上40歳未満は387,000円と定められています。大都市のほうが生活するためにお金がかかるために高く設定されているようですね。

 

 

2.世帯別生活費

 

第一区から第六区の区分と世帯の合計人数によって決められています。例えば、第一区の一人暮らしは527,000円、3人世帯は647,000円、第六区の一人暮らしは408,000円、3人世帯だと501,000円となっています。

 

 

3.冬季特別生活費

 

冬の寒い時期の暖房費を考慮して決められています。都道府県別に、北海道、青森県、秋田県を第一級地として寒い順に六級地まであり、それに第一区から第六区の区分と世帯の合計人数を組み合わせて金額が定められています。

 

例えば札幌市は第二区の第一級地で、四人家族の場合206,000円、同じ第二区でも千葉市は第六級地になるので四人家族で26,000円です。

 

 

4.住居費

 

住宅の維持費のことで、それぞれの地域の家賃相場などを参考に決められています。例えば東京23区で4人暮らしだと835,000円、北海道内の第五区と第六区の地域は4人暮らしで352,000円です。

 

 

5.勤労必要経費

 

居住地域と収入によって決められています。第一区、第二区で収入が250万円以上の場合は555,000円、収入200万円未満の場合は49万円となっています。

可処分所得を計算してみましょう

では、実際に可処分所得がいくらになるのか計算してみたいと思います。

 

例)大阪市に住むAさん 39歳
家族は35歳の妻と10歳の子ども
所得税・住民税・社会保険料を差し引いた手取り年収は500万円

 

1.個人別生活費
499,000円(Aさん)+499,000円(妻)+482,000円(子ども)=148万円

 

2.世帯別生活費
647,000円

 

3.冬季特別生活費
24,000円

 

4.住居費
653,000円

 

5.勤労必要経費
555,000円

 

1〜5の合計 ⇒ 3,359,000円

 

手取り年収から計算した生活費を引きます
500万−3,359,000=1,641,000

 

 

Aさんの場合、可処分所得は1,641,000円となります。

 

 

 

最低弁済額は?

 

では、Aさんが給与所得者等再生を利用した場合の最低弁済額はどうなるのでしょう?ここでは仮にAさんの借金総額が400万円、持ち家以外の所有財産が120万円だったとします。

 

 

給与所得者等再生では、「1.法律で定められた最低弁済額」、「2.財産を全て処分した時に得られる金額」、「3.可処分所得の2年分」のうち、一番多い金額を返済しないといけません。
小規模個人再生と給与所得者等再生の違い参照)

 

 

1.法律で定められた最低弁済額
Aさんの借金総額は400万円なので、法律で定められた最低弁済額は100万円です。

 

2.財産を全て処分した時に得られる金額
120万円

 

3.可処分所得の2年分
1,641,000円×2=3,282,000円

 

 

一番多い金額は可処分所得の2年分なので、Aさんの最低弁済額は3,282,000円ということになります。

 

 

Aさんが給与所得者等再生ではなく小規模個人再生を利用した場合、小規模個人再生には可処分所得の2年分という規定がないので最低弁済額は財産を全て処分した時に得られる120万円です。

 

 

Aさんのケースでは、
小規模個人再生 120万円
給与所得者等再生 328万円ほど
となり、最低弁済額に大きな差が出てしまいますね。

 

 

Aさんのように、収入が多めのサラリーマンの方は給与所得者等再生だと返済額が多くなってしまい、あまり借金が減額されないケースもあるようです。サラリーマンだからといって、給与所得者等再生しか利用できないわけではなく、小規模個人再生を利用することもできます。

 

 

ただ、給与所得者等再生では債権者の決議はいりませんが、小規模個人再生は債権者の決議が必要になります。普通は反対する業者はいないようですが、個人的な借金があるなど特別な事情がある場合もあると思います。

 

 

弁護士さんに相談すると、そうした事情なども考慮した上でどの方法がベストなのかアドバイスしてもらえますし、面倒な可処分所得の計算も全てやってもらえますよ。

関連ページ

個人民事再生とは?破産しないで借金を大幅減額
任意整理よりも借金が大幅に減額になる個人民事再生。どのくらい借金を減らすことができるのか?個人再生のメリットとデメリット、弁護士に依頼するメリットは?個人民事再生について詳しくわかりやすくお伝えしています。
小規模個人再生と給与所得者等再生の違い
個人再生手続には二つの手続方法、小規模個人再生と給与所得者等再生があります。小規模個人再生と給与所得者等再生の違いについて書いています。
個人再生手続きの流れ
個人再生手続きの大まかな流れについて書いています。個人再生は地方裁判所を介する手続きなので、各裁判所によって違っているところもあります。ここでは大体の流れについて書いているので参考にしてみてくださいね。
持ち家を残して債務整理できる?個人再生の住宅ローン特則とは
個人再生の住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)を利用するとマイホームを残して住宅ローン以外の借金を大幅に減額することができます。住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)のしくみや利用条件について解説します。
住宅ローン特則で住宅ローンの支払はどうなるの?
住宅ローン特則(住宅資金貸付債権に関する特則)を利用すると住宅ローンの支払はどうなるのでしょう?住宅ローンの支払が軽減される方法はないのか、住宅ローン特則を利用したときの住宅ローンの支払い方法、住宅資金特別条項について調べてみました。
養育費や税金は?個人再生で減額されない借金
個人再生で養育費や税金はどうなるのでしょう?個人再生で減額されない借金について調べてみました。
個人再生をしたけど払えなくなった場合は?
個人再生は再生計画が認可されたらあとは計画通りにコツコツ支払っていくだけです。でも、人生何が起きるかわかりません。病気、事故、天災、会社の倒産…もし再生計画通りの支払いができなくなってしまったらどうすればよいのでしょうか?
個人再生は住宅ローン完済でも持ち家を残せる?
個人再生をすると住宅ローンを完済した住宅や相続で取得した住宅はどうなるのでしょう?