個人再生で減額されない借金

個人再生の最大のメリットは借金の額を大幅に減額できることですが、税金や養育も減額することができるのでしょうか?結論から申し上げると、税金も養育費も減額することはできません

 

 

税金や養育費が減額されてしまうと不公平ですし、当然といえば当然ですよね。税金と養育費では支払の方法など扱いが異なります。また、税金や養育費以外にも減額されない借金もあるので、個人再生手続で減額されない借金について詳しくみていきたいと思います。

再生債権から除かれる借金

個人再生で整理の対象となる借金のことを再生債権といいます。どんな借金でも減額の対象になるわけではなく、再生債権とはならない、最初から再生手続の対象から除かれる借金がいくつかあります。

 

 

再生債権から除かれる借金は一般優先債権共益債権と呼ばれるもので、具体的には次のようなものです。

 

【一般優先債権】

  • 再生手続のために裁判所に納める手数料
  • 所得税、住民税などの租税
  • 健康保険料
  • 国民年金保険料
  • 科料・罰金・過料
  • 従業員の未払賃金
  • 分譲マンションの管理費・修繕積立金
  • 個人再生の申立前6ヶ月分の光熱費

など

 

 

【共益債権】

  • 再生計画の遂行のために必要な費用
  • 個人再生申立後の家賃、光熱費
  • 個人再生申立後の養育費

など

 

 

個人再生を申し立てると再生手続が終了するまで整理の対象となる借金(再生債権)は返済することができません。でも、再生債権に含まれない一般優先債権や共益債権にあたる借金は再生手続中でも関係なく支払いをしないといけません。

 

 

再生債権に含まれる借金は再生手続が終われば減額された金額を分割で支払っていくことになるのですが、再生債権から除かれる一般優先債権、共益債権は再生手続で減額されることもありません。

 

 

支払いが滞っていたり、払っていくのが苦しい場合もありますよね。税金や健康保険料、国民年金保険料などは場合によっては減額や分割納付が認められることもありますので、役所で相談してみるといいと思いますよ。

減額されない非減免債権

個人再生では借金をすることになった原因に関係なく、すべての借金が同じ割合で減額されることになります。ギャンブルや浪費で作った借金も、リストラでやむなく借りた生活費も区別なく扱われるわけです。

 

 

そうした借金だけではなく、不法行為によって裁判所から支払いを命じられた損害賠償金や、離婚の際に決められた養育費も再生債権に含まれます。でも、損害賠償や養育費まで他の借金と同等に減額されるのではちょっと納得がいかないですよね。

 

 

そこで、再生債権ではあるけれども減額はされない非減免債権というものが決められています。非減免債権は減額されないので全額支払いをする義務があります

 

 

どういったものが非減免債権なのかは民事再生法229条3項に定められています。

 

悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

 

これはただの不法行為ではなく、「悪意」を持ってなされた行為による損害賠償請求権になります。法律のうえでの「悪意」とは、「積極的な加害の意思」を指すということです。詐欺や横領の損害賠償はこれに当たります。

 

 

故意または重大な過失により加えた、人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

 

わざとケガをさせてしまった場合や、飲酒運転・悪質な危険運転などで他人にケガをさせてしまった交通事故などがこれに当たります。過失の少ない事故や物損事故の場合は非減免債権にはなりません。

 

 

夫婦間の協力及び扶助の義務、婚姻から生ずる費用の分担義務、子の監護の義務、その他の扶養義務に係る請求権

 

個人再生の申立前に未払いの養育費はこれにあたります。個人再生申立後の養育費は前に書いた通り共益債権にあたります。

非減免債権の支払い方法

非減免債権は減額されずに全額を支払わないといけないのですが、その支払いについては一般優先債権や共益債権とは違った方法になります。

 

 

一般優先債権・共益債権は個人再生の申し立てをした後もそれまでと変わらず支払いを続けていかないといけません。前述したように、一般優先債権・共益債権は再生債権には含まれないからです。

 

 

一方、非減免債権の場合は減額はされないのですが再生債権に含まれます。債権者一覧法に記載して裁判所に届け出をしなければいけません。最低弁済額を計算するときにもその算定額に含まれます。

 

 

ですから、非減免債権は裁判所から再生計画が認可決定されて確定されないと他の再生債権と同様に支払いをすることができないのです。また、再生計画の履行中(原則3年間)は再生計画で決められた弁済率に相当する額だけを支払い、残りは再生計画終了後に一括で弁済します。

 

 

例えば、非減免債権に相当する損害賠償金が100万円、再生計画で借金の総額の20%を支払うことが決定したとします。その場合、再生計画の履行中は100万円の20%である20万円を再生計画の3年間で支払い、再生計画が終了した3年後に残りの80万円を一括で支払うことになります。

 

 

 

養育費の場合、例えば月々5万円の支払いで個人再生申立前に20万円の未払いがあり、個人再生申立から再生計画に基づいた支払いを開始するまで6ヶ月かかったとします。

 

 

養育費は共益債権なので、個人再生を申し立てた後も月々5万円は支払いを続けていかないといけません。再生計画の履行中は未払い分20万円の20%、4万円を3年の分割で支払い、再生計画終了後に残りの16万円と申立から決定がおりるまでの6ヶ月間に支払うはずだった30万円、合計46万円と遅延損害金を一括して支払うことになります。

 

 

再生計画による支払いが終了すれば、非減免債権以外の借金については支払いがすべて終わっていることになるのですが、とは言え、一括で支払うというのはかなり大変なことだと思います。

 

 

再生計画中にコツコツと貯金しておく必要があるかもしれませんね。支払いが精一杯で積み立てておく余力がないといった場合もあるかもしれません。そんなときには非減免債権の支払い方法について、債権者と協議をすることになります。