同時廃止と管財事件

自己破産には同時廃止管財事件があります。同時廃止と管財事件の違いをざっくりいうと、資産がない場合は同時廃止、資産がある人が自己破産をするときには管財事件ということになります。

 

 

 

「資産」ってほどじゃないけれど、「数年掛けている生命保険がある」とか、「古いけど車がある」などという場合など、同時廃止になるのか管財事件になるのか、どちらになるのか気になりますよね。

 

 

 

また、場合によっては資産がなくても管財事件になってしまうことがあります。裁判所によって違いもあるようですが、同時廃止と管財事件の振り分けの基準について調べてみました。

 

 

同時廃止と管財事件の違い

同時廃止と管財事件の振り分け基準の前に、同時廃止と管財事件の違いを押さえておきたいと思います。

 

同時廃止 管財事件
予納金の額 1万円程度 20万円以上
財産の没収

なし。自己破産前の財産をすべて所有することができる。
そもそも財産がないから同時廃止なので残せる財産はない。

原則、20万円を超える財産は没収。自由財産の拡張が認められれば99万円までの財産(車、預金など)の保有が認められる。

破産管財人 選任されない 選任される
債権者集会

実施されない。
免責審尋日が設定され、裁判所に出頭して裁判官と面談の場合あり。

実施される。
個人の破産で弁護士が代理人の場合、出席しなくてもよいこともある。

手続き期間

自己破産開始決定から免責決定まで2ヶ月程度。

自己破産開始決定から免責決定まで3ヶ月以上。
免責

原則として、免責されることが前提。
免責不許可事由などがあれば管財事件になる。

免責不許可事由が疑われる場合は財産がなくても管財事件になる。ほとんどの場合は裁量免責になる。

 

 

同時廃止か管財事件、どちらがいいと思いますか?「良い」「悪い」の問題ではないかもしれませんが(笑)、管財事件は破産管財人に隠している財産はないか、どうして破産することになったのかなど、色々と調査されることになります。

 

 

私が弁護士さんに言われたのは「管財事件になると、郵便物が管財人に転送されるの。イヤでしょ?時間もかかるし、できるなら同時廃止がいいよね」という言葉でした。

 

 

別に隠している財産があるわけではなかったのですが、自分宛ての郵便物が他人に全部見られるのって、やっぱり勘弁してほしいなぁ。。。とは思いました。

 

 

ただ、いくら同時廃止にしてほしいと思っても、その通りになるとは限りません。破産申立書は「同時廃止を希望する」というところにチェックを入れて裁判所に提出するのですが、同時廃止か管財事件になるのか、判断をするのは裁判所です。

 

 

では、裁判所はどのような基準で同時廃止と管財事件を振り分けているのか、次に見ていきたいと思います。

同時廃止と管財事件の振り分け基準

同時廃止と管財事件で大きく違うのは「予納金の額」ですね。同時廃止だと1万円ぐらいなのに対して管財事件になると最低でも20万円が必要です。管財事件のうち、予納金が20万円なのは少額管財の場合で、通常の管財事件だと最低でも50万円の予納金を支払わないといけません。

 

 

少額管財とは、管財事件のうち、予納金を大幅に少額に減額して、手続き期間も短く、従来の管財事件よりも手続きが簡単になっていますが、少額管財になるためにはいくつか条件もあります。

 

 

少額管財については詳しくはこちらの記事を読んでみてくださいね。
少額管財は予納金が少額でOK!利用できる要件は?

 

 

 

破産法216条1項に同時廃止について次のように定められています。
「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足と認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続き廃止の決定をしなければならない。」

 

 

 

簡単にいうと、「破産手続の費用がないときは同時廃止ですよ」ということです。この、破産手続の費用が最低20万円ですから、基本的には20万円を用意できるのなら管財事件(少額管財)20万円を用意できないのなら同時廃止ということになります。

 

 

 

基本は「予納金が払えるかどうか」なのですが、現金を20万円持っていたとして、その20万円すべてを予納金として裁判所に納めてしまうと生活ができなくなってしまいますよね。ということで、現金については20万円よりもう少し大きい金額が管財事件に振り分けられる基準に設定されている裁判所が多いようです。

 

 

 

 

現金の取り扱いについて

 

 

東京地裁や横浜地裁などでは、以前は20万円を超える現金を持っていたら管財事件(少額管財)として扱われていました。東京地裁では平成29年4月1日から、横浜地裁では平成29年8月1日から、現金33万円未満は同時廃止、33万円以上は管財事件(少額管財)と改められました。

 

 

 

また、大阪地裁では現金と預貯金を合わせて50万円を超えると管財事件になります。大阪地裁も平成29年10月1日から改正されていて、以前は現金と預貯金を合わせて99万円までが同時廃止でした。

 

 

東京や横浜は現金と預貯金は別物という考え方で、大阪では現金と預貯金を合わせた基準になっている点は金額改正前も後も変わっていませんが、東京や横浜は少し緩く、大阪は少し厳しく、全体としては東京と大阪の差が少しだけ縮まったという感じでしょうか。

 

 

大阪地裁では以前から預貯金は現金と同等とみなされ、同時廃止、管財事件の基準も現金と預貯金を合わせた金額になっていますが、東京や横浜は現金と預貯金は別物という扱いをしています。

 

 

東京、横浜の「33万円」というのはあくまでも現金だけの話であって、預貯金は20万円以上あれば管財事件(少額管財)になるようです。

 

 

 

直前の現金化についても東京、横浜は現金ではなく元々の資産の形(預貯金や保険解約返戻金、自動車など)として扱われます。

 

 

例えば、手持ちの現金が30万円あるが、そのうちの25万円は保険の解約返戻金だとしたら、本来は現金33万円未満は同時廃止なのですが、現金5万円、解約返戻金25万円の保険と考えられて少額管財になるようです。

 

 

大阪地裁では直前の現金化について考慮されません。手持ち現金が40万円で、そのうちの30万円が自己所有の車を売却して作ったお金だったとしても、50万円を超えていないので同時廃止になります。

 

 

 

 

20万円基準

 

 

同時廃止か管財事件かの振り分け基準については裁判所ごとにかなり違いがあります。が、だいたいどこの裁判所でも採用している基準が「個々の財産が20万円を超えているかどうか」という基準です。

 

 

 

現金を除いた財産(自動車の査定額、保険の解約返戻金、株、宝石貴金属など)の一つ一つが20万円を超えていれば管財事件になります。東京や横浜は、この中に預貯金も含まれるのですが、大阪地裁の場合は預貯金は現金と同等の扱いになるので含まれません。

 

 

 

例えば、他に財産がなく管財事件になるような特別の事情もない場合で
1.査定額18万円の車と解約すれば返戻金が15万円の保険に入っている
2.査定額25万円の車を所有している
この2つのケースがあったとします。

 

 

1番のケースは車と保険、それぞれが20万円以下なので管財事件にはなりません。2番のケースは25万円の車は20万円を超えているので管財事件になります。財産の総額で考えると1番は33万円、2番は25万円で1番のほうが多くなるのですが、総額ではなく個々の財産の額で判断するのでこのようになってしまいます。

自由財産の拡張と管財事件

自己破産をすると財産はすべて手放さないといけないというのが原則なのですが、例外として所有し続けることが許される財産があります。そうした財産のことを自由財産といいます。

 

 

法律で定められている自由財産は次の3つです。

 

  1. 99万円以下の現金
  2. 差し押さえ禁止財産
  3. 拡張が認められる財産

 

 

  • 99万円以下の現金
  • 差し押さえ禁止財産

この2つは破産法上、無条件で自由財産として認められています。

 

 

差し押さえ禁止財産に含まれていない「預金」「自動車」「保険の解約返戻金」などは、金額にかかわらず破産財団として没収されるのが原則です。でも、自由財産の拡張が認められると自由財産として手元に残すことができます。

 

 

破産法では自由財産の拡張を決定するためには管財人の意見を聞かなければいけないと定められています。そのため、自由財産の拡張を認めてもらうために管財事件として破産申立をするという場合もあるようです。

 

自由財産の拡張について詳しくはこちらの記事を読んでみてくださいね。
自己破産で残るもの〜身ぐるみ剥がれるわけじゃない?

財産がないのに管財事件になるケース

財産がまったくないのに管財事件になる場合もあるようです。

 

  • 財産を隠している疑いがある
  • 過払い金が発生している可能性がある
  • 未回収の債権や売掛金がある
  • 直前に一部の債権者だけに返済をしているなどの否認対象行為がある
  • 破産の原因がギャンブルや浪費など、免責不許可事由がある
  • 債権者から反対意見が出ることが予測される

 

以上のような場合、財産がまったくなくても管財人による調査が必要と裁判所が判断するケースがあり、管財事件となることが多いようです。